こんにちは。渋谷の税理士 吉田です。
今回は、消費税の軽減税率に対する事業者が取っておくべき準備・対応についてお話したいと思います。
そもそもの消費税の基本について
消費税は、国内で事業者から、物やサービスの提供を受けた際に課税される税金になります。
そして、その税金は物やサービスを最終的に受けた人(最終消費者)が負担することになっています。
例えば、真ん中の卸売業者は、①商品の製造業者より仕入れを行い、②小売業者へ販売します。
消費税は、①商品の仕入れ時に製造業者へ支払い、②商品の販売時に小売業者より預かります。
納付額は、②預かった消費税-①支払った消費税 となります。
また、その他の経費の支払いにかかった消費税についても②より差し引いて計算します。
通常は②>①になりますので、消費税の納付を行うことになります。
そして、事業者は①、②のそれぞれの取引について請求書などの書類の保存をしなければなりません。
軽減税率:どのような準備・対応が必要になるか
準備が必要な事業者
軽減税率は、飲食料品や定期購読契約の新聞などに適用されます。
これらを商品として販売する事業者は、設備投資などの準備が必要となります。
・新聞を取り扱う新聞社など
・飲食料品を販売するスーパー・コンビニ・薬局・八百屋・精肉店など、
・飲食店などに食材を提供する食材卸業者、精肉業者など
その他、仕入れや経費で上記の商品を購入している事業者は、会計ソフトの複数税率対応へのバージョンアップが必要になります。
レジやシステムの改修など
軽減税率が適用される商品を取り扱う事業者は、レジやPOSシステムなど複数税率対応かどうか、設定ができるかどうかなど確認しておく必要があります。
これらについては軽減税率対策補助金がありますので、適用できるか確認しておくことをオススメします。
価格表示
店頭で商品を販売する場合、価格をあらかじめ表示しておく必要があります
総額表示といって税込価格を表示することが義務付けられていました。
軽減税率実施後は、イートインスペースがあるコンビニなどでは8%と10%の2つの税率が出てきてしまいます。
そのようなときはどのようにするのでしょうか?
消費者庁から公表されている価格表示方法は以下のようになっています。
また、総額表示の特例で「現に表示する価格が税込価格であると誤認されない措置」を講じていれば、税込表示でなくてもいいこととされています。
その場合の表示は、こんな感じになります。
ただし、平成33年3月31日までの間にできるだけ早く税込表示するように努めなければならないとされています。
区分経理
売上/仕入について消費税の税率が8%と10%で出てくるような場合、税率ごとに区分して経理する必要があります。
弥生会計など会計ソフトを使っていれば、これらに対応しているので問題はありませんが、EXCELなどで集計している場合などは気をつけなければなりません。
各取引ごとに記載する場合はこちら ↓ 。
一定期間まとめて記載する場合はこちら ↓ 。
請求書(区分記載請求書等)
区分経理をしなくてはいけないので、請求書を発行する際には税率ごとに区分して請求書を発行してあげる必要があります。これを区分記載請求書などと呼びます。
レジなどもこれらが表示できるものにアップデートが必要になります。
区分記載請求書等は、領収書や納品書、小売業者のレシート、仕入れ明細書などが範囲となってきます。
ただし、取引金額が3万円未満の場合や、自動販売機から購入するなど請求書等をもらうことが困難な場合には、一定事項を記載した帳簿を保存すれば良い事になっています。この場合でも軽減税率の適用を受ける場合は、「軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨」を記載しておかなければなりません。
区分記載請求書等の例を載せておきます。
レジなどで多数商品を登録できない場合には、その商品が一般的に見て軽減税率の対象になるものかどうかわかれば良いので、肉・野菜のような総称での登録でもOKです。
従業員などへの社内教育
スーパー、コンビニなどで従業員が複数雇用している場合には、思わぬクレームに合わないためにも、従業員に軽減税率とはどういうものか?、どういった場合に適用するのか?、など理解を深めておく必要があります。
軽減税率対策補助金
この制度は、中小企業庁が行っているもので、消費税の軽減税率制度の実施に伴って複数税率対応のレジ導入や受発注システムの改修などの対応が必要となる中小企業等を支援する補助金制度です。
申請類型
補助金には以下の2つがあります。
A型・・・複数税率対応レジの導入支援
B型・・・受発注システムの改修等支援
申請
申請の手続きは、書ききれないため簡単な概要のみ記載しておきます。
詳しくは、中小企業庁のホームページで確認してください。
申請に必要なもの
・申請書(数枚)
・証拠書類(内訳の分かる領収書や請求書、製品の証明書)
A型及びB-2型は事後申請、B-1型は事前申請です。
A型 一部販売店等による代理申請が利用可能。
B型 システムベンダー等による代理申請を原則。
申請受付期限
2016年3月29日から2019年9月30日までに導入又は改修等が完了したものが支援対象。
申請 受付 期限 |
A型及び B-2型 |
2019年12月16日までに申請(事後申請) |
B-1型 | 上記期限(2019年9月30日)までに事業を完了することを前提に、2019年6月28日までに交付申請を行ってください。 完了報告書は2019年12月16日までに提出してください。 |
この他に、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫では、優遇金利でのレジの導入・改修やシステムの改修・入替等の融資制度があります。
是非活用したいですね。
最後に
軽減税率の開始にはあと1年ありますが、日々の業務に追われているとアッという間に2019年10月が来てしまいます。
特にレジやシステムなどは、人手不足や生産が追いつかなくなるなどあるかもしれませんので、早めに対応を考えておく必要があります。
まずは、自分が軽減税率の適用がある事業者なのか確認するところから始めましょう。